北京は、どれほど誇張してもしきれない都市ですが、青空が広がる日には（最近はほとんど青空になってきました）、地上で最も素晴らしい場所のように感じられます。高さ528メートルのCITICタワーのような目が眩むほど近代的な高層ビル、いたるところで遭遇するザハ・ハディド設計の未来的なビル、都市の感動的な壮麗さと歴史的名所は、北京の真の魅力です。すべて1日のうちに、万里の頂上を登り、宮殿を見学し、火鍋に舌鼓を打って温まることができる場所が、ほかにあるでしょうか？決まったコースを回るのは性に合わないという方は、北京らしさあふれるフートン（小路）をそぞろ歩き、通りいっぱいに並ぶ小さな店やレストランやバーにふらりと入ってみてはいかがでしょう。きっと、充実した午後を過ごせることでしょう。そして、この拡大し続ける都市には中国全土と世界中から集まった2200万人近い人々が住んでいるにもかかわらず、過密に感じることは滅多になく、いくつもの公園、湖、水路が、群衆を逃れる癒しの場を提供してくれます。

天壇公園には、美、宇宙観、王朝の歴史が詰まっています。1420年に完成し、ユネスコ世界遺産に登録された天壇は、明・清王朝の歴代皇帝が豊穣を願って祭祀を行った場所です。天と地の関係に関する古代中国の信念に基づいて設計された複合施設は、静かに広がる地面にそびえる堂々たる建築物を特徴としています。早朝に訪れると、太極拳の練習やさまざまな活動をする地元の人たちを見ることができます。

北京の見どころは、歴史と政治だけではありません。中国の文化の都でもあるのです。中国国家大劇院（NCPA）でショーを見れば、その理由がわかります。チタンとガラスでできたドーム型の建造物は、水に浮かぶ卵のようにも見え、この街のより伝統的な建築をいっそう引き立てています。ここには、オペラハウス、コンサートホール、劇場があり、チケットは手頃な料金のものからそうでもないものまでさまざまです。上演される演目は、バレエ、オーケストラ、演劇と多岐にわたります。つまり、ここには、すべての人にとって見るべきものがあるということです。

コロナ禍が始まる直前に復興された隆福寺（Longfusi）地区は、以来、市内で最もクールなスポットのひとつとしての地位を固めています。北京の中心近くに位置する歴史的地区は、かつて有名な商業街でした。現在では、地元のクラフトビール醸造所、ブティックレストランが並び、地区の名の由来となった隆福寺は、修復を経て、明王朝の時代からの佇まいを今に伝えています。京都発祥のチェーン「% Arabica Kyoto（%アラビカ京都）」でコーヒーを1杯飲んだら、隣のM Woods Art Galleryで芸術に触れるのも良いですね。

四川料理店「張媽媽（Zhang Mama）」は、伝説的な料理で有名です。家族経営のこの飲食店は、辛い鉢鉢鶏（ボーボージー）（串に刺した野菜や肉をチリオイルの鉢に漬けたもの）やコシのある担々麺、宮保鶏丁（ゴンバオジーディン）を求める地元の人でいっぱい。ぎゅうぎゅうに詰めに置かれたテーブルが、活気あふれる雰囲気をいっそう掻き立てます。現在レストランは数店舗を展開していますが、交道口店に行けば張おばさん（張媽媽）本人を見ることができます。長時間（本当に長時間）待ちたくなければ、食事のピーク時間を避けて訪れましょう。

北京に行ったら、北京ダックは外せません。京雅堂なら、いつでも食べることができます。トレンディな三里屯地区のシックなホテル内にあるミシュランの星付きレストランは、高級感を漂わせながらも堅苦しさを感じさせず、北京でも最高クラスの北京ダック（ナツメヤシの薪を使った直火でローストしたもの）と点心（食べ放題が激安）を提供します。スタイリッシュな店内ときめ細やかなサービスは、ショッピングや人間観察で午前中を忙しく過ごした後には最高に嬉しい休息のひとときをもたらしてくれるでしょう。

北京中心部のビジネス街に近頃オープンしたメサ・マードレ（Mesa Madre）では、パンのサワー種推進運動が健在です。このお店は、看板商品であるパンと伝統的なフィリピン料理を提供しています（北京で唯一のフィリピン料理店とのこと）。豚バラ肉をやわらかく煮込んだアドボや、オックステールをピーナツソースで煮込んだシチューのカレカレなど、ボリューム満点の料理を楽しむことができます。居心地の良い空間に用意されたテーブルはごくわずかですが、折衷的なメニュー、カラフルな装飾、スペシャリティビールなど、個性がいっぱいあふれています。

紫禁城は必見です。でも、貴重な旅の時間を節約したい方は、景山（ジンシャン）公園の丘に登れば、宮殿の完璧な写真を撮ることができます（半日かかるところが15分で済みます）。紫禁城を囲む堀を掘った残土で築いた丘、景山のてっぺんまで登れば、息を飲むような首都のパノラマが開けます。紫禁城の荘厳な眺めは言うまでもありません。北京の真ん中に佇むオアシスです。

お目当てがプロパガンダポスター、繊細な茶器、中国伝統の手工芸品、あるいはクリスタルであっても、潘家園のアンティークマーケットは外せない場所です。北京最大の蚤の市として知られるこの市場には、屋台と店の両方があり、中国全土から集まった骨とう品、コレクション品、珍品が、所狭しと並んでいます。とんでもない高値を支払いたくなければ、気のいい地元の人との値段交渉は必須です。市場が最もにぎわうのは、週末の午前中です。

小さなカフェ／バー／ミュージックストアの「ナゲット（Nugget）」は、昨年、多くのライブミュージック会場が次々に閉鎖される中でオープンしました。北京の魅力あふれるフートンにひっそりと佇む、ミニマルなデザインのスペースは、地元のDIYレーベルNugget Recordsが設立しました。店内は、ノスタルジックな音楽愛好家の夢そのもの。カセットプレイヤーやレーベルが制作したテープが棚に並び、ダーティコーヒーやカクテルがメニューを構成します。録音の中から曲を探すのもよし、アコースティックショーを聴くのもよし、あるいはドリンク・アンド・ドロー（飲みながら絵を描く）のようなさまざまな夜のイベントに参加するのもよしです。