ドバイは、静止している都市ではありません。新しい街が次々に生まれ、やがて名所となるべきランドマークが毎年のようにスカイラインを広げていきます。しかし、変化しているのは地理だけではありません。国の優先課題も変化を遂げています。かつてドバイは、外に目を向けていることで知られていました。世界的に有名なシェフが招かれレストランをオープンし、グローバルブランドに光り輝く店舗が提供されました。近年では、地元の住民、地元出身者、起業家に重点がシフトし、支援が向けられています。いまやドバイには、注目に値する地元出身のシェフ、地元のブランド、創造性あふれる中小企業が目白押しです。もちろん、華やかなきらめきは健在ですが、素晴らしい人工物を超えた先に、ドバイの魂が存在します。

ドバイのダウンタウンに広がる「ブレードランナー」的スカイラインを眺めていると、未来にタイムトラベルしているような気分になります。主役は、ブルジュ・ハリファやその近くにあるオープン間近の未来博物館。同時にこの場所は、紀元10世紀の昔にさかのぼる場所に立っている場所でもあります。ジュメイラ遺跡はかつて、インドや中国とイラクを結ぶ交易路の隊商宿泊地でした。現在残っているのはアッバース朝時代の遺跡です。最近になって初めて公開されましたが、発掘作業は1969年から始まっており、陶器、硬貨、その他の古代人工遺物が出土しています。

アルサーカル・アベニューは、アベニューというより、文化的かつ創造的なコミュニティを育成するための工業団地と言うべきでしょう。ここは、あらゆる種類のアーティスト、そして、起業家精神あふれる中小企業を見出すことができる場所です。アートギャラリーやヴィーガンカフェが、ヨガスタジオ、手作り香水工房、アート映画館と軒をつらね、ほかにも60軒ほどの地場の店が並びます。また、時期にもよりますが、年間を通して多くのイベントが開催されます。観光客がよく来る場所ではありませんが、真の探検者にはぴったりのスポットです。

パーム・ジュメイラに立ち寄らなければ、完璧なドバイ訪問とは言えません。この人工島には、ビーチを擁する多くの5つ星ホテルのほか、ひと目見てわかるアトランティス・リゾートが存在しています。さらに、ウォーターフロント（パーム・ビーチ、ザ・ポイント（The Pointe））沿いには最新のグルメスポットが目白押しです。唯一の問題は、パームにいるときは息を飲むような島の形を見ることができないこと。でも、これからは違います。2021年4月にパーム・タワー52階にオープンした展望室「ザ・ビュー（The View）」では、地上240メートルという高さから、「木」の輝かしい全貌をパノラマで捉えることができます。夕日の絶景は必見です。

ドバイのファインダイニングシーンは移り気で、得意客は常に目新しいものを求めています。しかし、人気においても、一貫した卓越性においても、決して揺らぐことのない少数のレストランがあります。「ラ・プティット・メゾン（La Petite Maison）」は、なかでもトップクラスに位置しています。店内はアートで飾られ、洗練された地中海料理が提供され、上流の常連客が仕事帰りに立ち寄ります。牡蠣とブッラータをつまみながら泡立つカクテルを味わった後は、マッシュルームリゾット、そして、グリルしたリブアイステーキ、付け合わせの最高にクリーミーなポテト・ドフィノワーズをお楽しみください。料理も一流ですが、このお店の最大の特徴はその雰囲気、言葉では言い表せないほど至れり尽くせりのサービスです。

「タイムアウト・マーケット・ドバイ（Time Out Market Dubai）」のフードホールは、2021年にオープンしたニューフェイスですが、地元育ちの出店レストランの多くが以前から抱えていたファンのおかげで、すでに人気スポットになっています。地元の人気シェフ、レイフ・オスマンとアレックス・シュトゥンプが、ここに出店しています。また、熱狂的人気を誇るスモークハウス「マッタル・ファーム（Matter Fam）」の初めてのイートインショップもあります。18時間燻製した、骨からすべり落ちるような美味しい肉が有名です。フュージョンインド料理から、レバノンの屋台料理、職人技のピザまで、17種類の食事や飲み物の店が、スーク・アル・バハールの洞窟のようなスペースに並んでいます。ここからは、ドバイのもうひとつの必見スポット、音と光のスペクタクルが感動的なドバイ・ファウンテンを見渡すことができます。

ここ数年ドバイでは、居心地の良いプライベートな空間にテーブルをエレガントに配し、客をもてなすサパークラブが盛り上がりを見せています。ネハ・ミシュラ（Neha Mishra）の店で予約を取るのは、どの店よりも難しいかもしれません。彼女が作るラーメンは、もはやレジェンド級です。なにしろ、彼女がInstagram Storiesに日付を掲載するやいなや、30秒以内に1カ月分の予約が埋まってしまうのです。食通のみなさんにとって幸いなことに、現在では彼女が経営するレストラン「キノヤ（Kinoya）」があります。ここは、ドバイにある他の多くの華々しい日本料理レストランとは一線を画し、本物の美食体験を提供することに専念しています。看板メニューはラーメンですが、味噌バター茄子、からりと揚がった唐揚げ、マグロの刺身、そしてご飯の上にダシと一緒にかけた温泉卵も、頼んで間違いなしのメニューです。

中東に来たら、砂漠体験はお約束ですね。でも、Instagramの水準を引き上げて、よくあるデューンバッシングやディナープランの代わりに、早朝の上空から見た景観を掲載するのも一興です。プラチナム・ヘリテージ（Platinum Heritage）とバルーン・アドベンチャーズ・ドバイ（Balloon Adventures Dubai）が提供する気球体験は、夜明け前から始まります。気球に乗って浮上するにつれて目の前に広がっていく雄大な景色の向こうに、魔法のような日の出を眺めることができます。その後はビンテージのランドローバーで砂丘を駆け抜け（跳ねるガゼルを見逃さないように）、豪華なキャンプに到着したら、極上の朝食が待っています。

ドバイ在住の外国人たちは、週末をビーチで過ごします。パブリックビーチは、清潔で、多くの場合は設備も充実しています。カイト・ビーチは、家族みんなが楽しめる場所です。ミニウォーターパーク、子ども向けのプレイエリア、多くの飲食店があり、言うまでもなく輪郭の美しいブルジュ・アル・アラブを眺めることができます。あるいは、奮発してプライベートクラブのラウンジチェアーサービスを利用するのはいかがでしょう。ワン＆オンリー・ロイヤル・ミラージュ（One&Only Royal Mirage）にあるドリフト・ビーチ（Drift Beach）でリヴィエラのエレガンスを味わうもよし、シーザーズ・パレス・ブルーウォーターズ（Caesars Palace Bluewaters）にあるコーヴ・ビーチ（Cove Beach）のローズラウンジでパーティ気分を楽しむもよし、あらゆるタイプのビーチクラブが揃っています。

世界最長の都市型ジップラインとしてギネス世界記録に認定されている「XLineドバイ・マリーナ（XLine Dubai Marina）」は、「まさにドバイ的」という体験チェックリストの2項目に当てはまります。その1、輝くほどに白いヨットやアイコニックなスカイラインを望むおしゃれなマリーナを訪れる。その2、ドバイとその皇太子が名をとどろかせるダイナミックな冒険を味わう。地上170メートルの高さから時速80キロという涙が出るほどのスピードで1キロの距離を滑空し、途中、ねじれたデザインのカヤン・タワーを猛スピードで通過します。到着すると、その近くにはうまい具合にショッピングモールもあります。3つのドバイ体験を一度にコンプリートできますね。